プリミティブ型同士の変換は型キャスト as
を使う。
Undefined Behavior は存在しない
(Rust 1.45 で浮動小数点数の整数キャストから UB が消えたらしい。
ただしチェックの分遅くなっているので unsafe 関数が追加されている)。
From<T>
と Into<T>
トレイトが標準ライブラリ中にあり、多数の型パラメータに
対して実装されている。
プリミティブ型にも結局実装されている。
変換できそうな雰囲気のものは大体変換できるし、自前で実装することも簡単。
From<T>
を実装すると勝手に Into<T>
も実装され、そのままにするのが推奨である。
失敗する可能性のあるものは Result
を返す
TryFrom<T>
と TryInto<T>
になっている。
into()
は返り値がジェネリック型なので何らかの手段で推論させる必要がある。
構造体の初期化や関数の引数で String が必要なのに &str を渡してエラーになった
場合など、型が合わない場合は適当に into()
パなせばある程度は OK。
文字列の場合は後述の to_string()
でもよい。
あと to_owned()
もある。
let s1: String = "abc".into();
文字列との変換は特別にトレイトが用意されている。
ToString
トレイトを実装した型は、文字列 (String
) へ変換できる。
ただし std::fmt::Display
を実装すると自動的に ToString
も実装されるため、
そちらが推奨されている。
そうすると to_string()
だけでなく、
println!()
等のフォーマッタの対象にできるようにもなる。
FromStr
トレイトを実装した型は、文字列 (&str
) から変換できる。
文字列からの変換には慣用的に str
の parse()
メソッドを使い、
内部で FromStr
の実装が使われる (FromStr
を実装していれば parse()
が
使えるようになる)。
失敗する可能性があるため返り値は Result
になり、また返り値がジェネリックとなるため
何らかの手段で推論させるか型パラメータを自分で指定する必要がある。
let parsed: i32 = "5".parse().unwrap();
let turbo_parsed = "10".parse::<i32>().unwrap();
ちなみに JSON ライブラリ (serde_json) も似た雰囲気。
名前が全然違う型や関数が密接に関連していてあまり好ましく思えないが、 そういうものなので受け入れること。
for は C とは違って完全にイテレータ限定。
Vec
とかを for に渡すと本体がイテレータの中に move されて以後使えなくなる。
初心者狩り。
本当にこの初心者狩りが必要なものなのかは理解できていない。
for x in v {
// ...
}
// これ以降 v を使うと既に move されておりエラー
(詳細) Vec
は IntoIterator
を実装しており、self を消費して Iterator に
自動変換されるため。
v を消費したいことはほぼ無いと思われるので、以下でよい。
for x in &v {
// ...
}
for x in &mut v {
// ...
}
それぞれ v.iter()
と v.iter_mut()
に対応している。
IntoIterator
トレイトの into_iter()
は自身をイテレータに変換する。
これを実装していると for 文の対象にできるようになる。
なお self を move して消費してしまうので以後使えなくなるという初心者が絶対引っかかる
罠がある。どうかと思うがきっと深い理由があるに違いない…。
https://doc.rust-lang.org/std/iter/index.html#for-loops-and-intoiterator
ほとんどのデータ構造 (コレクション) 型は iter()
iter_mut()
で参照を
イテレートするイテレータを返すので、それを for で回せば OK。
また、それができる場合、基本的に impl Iterator for &Vec
impl Iterator for &mut Vec
のようにコンテナの参照や可変参照型に対して
IntoIterator
が実装されており、iter()
iter_mut()
を返すように実装されている。
こちらの方が文字数が少なくて楽?かもしれない。
let mut values = vec![41];
for x in &mut values { // same as `values.iter_mut()`
*x += 1;
}
for x in &values { // same as `values.iter()`
assert_eq!(*x, 42);
}
https://doc.rust-lang.org/std/iter/index.html#iterating-by-reference
FromIterator
は from_iter()
で逆にイテレータからその型に変換できることを表す。
from_iter()
の直接利用は非推奨で、これまた名前が全然違って分かりにくいが、
イテレータの collect()
メソッドでその型に変換できるようになる。
例によって返り値がジェネリックなので何らかの方法で推論させる。
要は Vec
の for での回し方と collect()
での Vec
の作り方を覚えれば、
IntoIterator
FromIterator
の型名を見かけたら同じような使い方ができると
理解して OK。
型は &[T]
と書く。
配列っぽいもの (メモリ上に連続して置かれているもの) (への一部)への参照。
要は (ptr, len)
。
参照先がいつの間にか消えていてアクセス違反を起こすようなコードはコンパイラが
エラーにして弾いてくれる。
一部を抜き出したい場合にコピーが発生せず高効率で安全性も担保されているが、
ぶっちゃけそういうケースは少なめで、
配列全体を渡したい場合が多く、それもスライスの一種として渡すことになる。
関数が配列っぽいものを読み取り専用で受け取りたい時は &Vec ではなく これで受ければ大体 OK。 配列っぽいものなら型を問わずに渡せるようになるし、 配列っぽいものの一部のみを渡せるようにもなる。
書き込み用に渡す場合は無理なので普通に &mut Vec<T>
とか &mut String
を渡す。
ただし空の受け取り領域を渡すくらいなら move return すれば OK。
型は &str
と書く。
スライスのうち文字列に特化したもの。 u8 のバイト列スライスに、UTF-8 として正しい部分列であることの保証が追加された感じ。 文字列特有の操作関数もたくさんある。 スライスなので部分文字列を参照することもできる。 バイト単位で範囲を指定することになるが、UTF-8 文字は可変長なので文字の途中で区切ると 実行時に panic を起こす。 安全な切れ目のインデックスを得る関数は多数用意されている。
文字列を読み取り専用で受け取りたい場合はこれで受け取れば
&str
(リテラル) と String
の両方に対応できる。
文字列リテラル "こういうの"
の型は &'static str
。
'static
はプログラムの実行中ずっと有効であるライフタイムで、
省略可能な場合も多いのであまり気にしなくてよい。
要は C/C++ と同じく文字列リテラルは実行可能ファイルの .rodata
領域に
置かれていて変更不能であり、
プログラムのロード時にメモリにコピーされプログラムの実行中はずっと有効であり、
文字列リテラルからは (ptr, len)
という値が得られるということ。
文字コード問題に本当に真摯に取り組んでいる。 他の言語も頑張って。
[u8; 10]
のように書く。
固定長配列。 スタックに置かれるのであまり大きくしたくない。 大きな配列は凝った初期化がしにくく、ヒープに置くなら可変長の利点が要らなくても Vec でよい感。
// [i32; 3]
let array = [1, 2, 3];
通常は型もサイズも勝手に推論してくれるが、const や static 等 型推論が使えないところでは使えない。
また、型だけ明示してサイズを推論に任せることができない。
このくらいできてもいいような気がするけど、generic_arg_infer
は
まだ安定化されていない。。
#![feature(generic_arg_infer)]
let _arr: [f32; _] = [0.0, 1.0, 2.0];
現実的には、スライスを定数で初期化するのが楽。 微妙に元から意味が変わっている気がしなくもないが、 スライスは (先頭アドレス, サイズ) の組であり、そのスライスをコンパイル時定数に しているのでサイズもコンパイル時定数にできている気がする。
const FOO: &[f32] = &[0.0, 1.0, 2.0];
ヒープに置く安心と信頼の普通の可変長配列。 だいたいこれで OK。 move の勉強もこれで。
文字列に特化した Vec みたいなもん。
Vec<u8>>
に UTF-8 として不正な状態を許さないチェックを追加した感じ。
スライスは &str
になる。
Vec 以外は use が必要。
以下の受け方を覚えることで受けられる型の種類が多少増えるが、
&Vec<T>
でなく &[T]
&String
でなく &str
println!()
での Display
や for の IntoIterator
Iterator<Item=T>
など、
trait を受け取る標準ライブラリや言語機能を参考にすれば受け取れる型の範囲を
増やすことができる。
to_string()
の使える型は ToString
trait を実装している。
(Display
trait を実装し、自動でそれを使って ToString
が
実装されるようになっている)
https://doc.rust-lang.org/std/string/trait.ToString.html
pub trait ToString {
// Required method
fn to_string(&self) -> String;
}
この trait をパラメータとして受ければ文字列に変換できるもの全般を 受け方は、基本的にはジェネリックでコンパイル時解決する。 vtable による実行時解決は必要に迫られない限り推奨されない。
具体的な型ではなく抽象的なインタフェースに対してプログラミングすると柔軟性が増すという
教えは素晴らしいものだが、それをコンパイル時解決することにより実行時コストが減るので
さらに素晴らしいというのは C++ テンプレートの教えなので賛否両論。
ビルド遅いんですけど。
あと具体的な型1つにつき関数が1回インスタンシエートされるので命令サイズ増えますよね。
fn my_func1<T>(value: &T) where T: ToString {
let s = value.to_string();
}
my_func1
を1つの型パラメータ <T>
をとるジェネリック関数として定義する。&T
で受けて、T に型を当てはめさせる。T
は trait ToString
を実装しているという制約を宣言する。
これで T
は impl ToString
していることが保証されるようになるため、
value.to_string()
呼び出しのコンパイルが通るようになる。my_func1
は型パラメータ <T>
を持つ。value: &T
、つまり value
は T
への不変参照型である。T
は impl ToString
しているものに限る。T
型は to_string()
メソッドを利用可能である。fn my_func2<T: ToString>(value: &T) {
let s = value.to_string();
}
慣れてきたらこのように省略できる。
fn my_func3(value: &impl T) {
let s = value.to_string();
}
さらに慣れればここまで省略できる。 ただし型パラメータが無くなったように見えるが impl はシンタックスシュガーなので やはりジェネリック関数である。
ここまで言っておいてなんだが to_string()
は常に新しい String
オブジェクトを
生成してしまう (ヒープに malloc する) のでそれでいい場合以外は微妙。
文字列参照に変換できる型全般を受け取りたい場合は AsRef<str>
だが、
String
と &str
を両方受けたいなら &str
スライスで受けて
String
の時は &string_variable
で渡すだけなのでジェネリックで受ける意味は
あまりない…。
pub trait AsRef<T>
where
T: ?Sized,
{
// Required method
fn as_ref(&self) -> &T;
}
もうちょっと高度なものに Cow
(copy-on-write と見せかけて clone-on-write)
trait がある。
無理して使うようなものではないと思うが、ライブラリが使っているとよく分からなくて
きれそうになるので…。
これは参照による借用とそのものを所有するケースを enum で両対応したものである。
pub enum Cow<'a, B>
where
B: 'a + ToOwned + ?Sized,
{
Borrowed(&'a B),
Owned(<B as ToOwned>::Owned),
}
内部が知らない trait とライフタイムでいっぱいできれそうになるが、
B
に str
を入れてみると Borrowed(&str)
となる。
読み取りに使っている間はそのまま低コストな &str
で取り扱い、
書き込みが必要になったらその時に to_owned()
を呼び出して String
を生成する。
ToOwned
ってなんやねんという感じだが、Clone
をもう少し一般化したものである。
Clone
は不変参照 &T
からコピーオブジェクト T
への変換だが、
&str
と String
は全然別の型なので、別の型に対しても適用できるようにした
バージョンという感じである。
B
を str
とすると、<B as ToOwned>::Owned
は String
に解決される。
最終的な結論としては Into<Cow<'a, str>>>
で受けるのが一種のイディオムになっている
ようだが、そこまですべきなのかはよく分からない。
クローンせず不変参照だけで処理完了するケースがそれなりに存在するなら価値はありそうだが、
重いクローン処理するかどうかが実行時解決になりコードサイズ
とコンパイル時間が大きくなる気がする。
一般的な参照管理のツール類。
あまりに普通過ぎて逆に使わない。かも。 C++ unique_ptr 相当に思う。
Box<dyn MyTrait>
のように dyn
キーワードが必要。Reference Count。参照カウント。 所有権を複数人で共有し、被参照数を表す単一の整数で管理する。 誰からも参照されなくなった瞬間に1回だけ解放される。
C++ shared_ptr の参照カウンタ操作部分がスレッドセーフでないもの。
スレッドセーフにして shared_ptr と同等にしたものが Arc
。
C++ も古くは auto_ptr が vector 等のコンテナに入れられないため スレッドセーフな shared_ptr を作って入れていた時期があったが、 普通にオーバースペックである。 まずスレッドセーフでなくていいし、参照カウントもいらない (所有権のみでよい => unique_ptr, Box)。
スレッドセーフでない Rc は実戦では使いどころが少ない気がする。
循環参照の問題や、弱参照も一般的な考え方の通り。 Rust を使っていると全ての安全性をコンパイラが保証してくれる錯覚に陥るが、 そんなことはないので注意。
Atomic Reference Count。 参照カウントにアトミック変数を用いたもの。 カウンタのインクメント、(デクリメント + 0 になったかの確認) にアトミック命令を 使うことで、複数スレッド間でのオブジェクトの共有を可能にする。 全ての所有者が所有権を放棄した瞬間に1回だけ解放される。
マルチスレッドプログラムを書くととんでもなく出番が多い。 全てのスレッドから参照されなくなった時点で自動的に1回だけ解放できる。 長生きするはずの親スレッドがエラーで早期終了した場合等にも対応できて大変便利。
C で書かれた OS カーネルでも多用されるしそれはそう。
他のスレッドに move できることを示す。 ほとんどの基本型は Sync で、内容が全て Sync なら複合型も自動的に Sync になる。
特別な事情がない限りはほとんどのデータはスレッドをまたいでも問題ないが、 例えば Rc は clone して作ったもう1つの参照を別スレッドに転送してしまうと 2つのスレッドから1つの参照カウントをノンアトミックに操作することになり、 データレースを起こして壊れてしまうため、Send がついていない。
&T が Send である型。 正確な定義は難しいので、簡単に言うと複数スレッドから参照され 同時にアクセスしても安全な型。
こちらは普通の型はそんなことはない。
Mutex
とかに包むと Sync にできる。
名前からしても同期が取れているという意味で、分かりやすい。
大体わかった、とプログラムを書いてみると、Rc や Arc の中身が変更できなくて詰む。
https://doc.rust-lang.org/std/cell/
Rust の borrow checker は、1つのオブジェクトに対して
&T
&mut T
のどちらか のみ を許可することによってメモリ安全性をコンパイル時に保証している。 shared-exclusive lock のルールと同じ。
1つのオブジェクトの所有者を Rc
や Arc
で増やした場合、
安全性を保証するには中身を immutable にするしかない
(2つ以上の可変参照を同時に作れるようになってしまうため)。
しかしそれだと可変なオブジェクトを共有することができなくなってしまい、
まともにプログラムを書けなくなってしまう。
自身が immutable だとしても中身を mutable として変更できるのが std::cell
シリーズ
(シングルスレッド限定)。
マルチスレッドに対応したのが Mutex
, RwLock
など。また、atomic も。
強力なコンパイル時チェックを一部緩和することができる。
当然ただ緩和するだけだと壊れる可能性があるので、何らかの対応が取られている。
自身が immutable でも、中身の値を変更できるのが Cell
。
内部への参照は禁止され、値の取得と設定は全て move で行う必要がある。
Copy ならば move がコピーになるため、扱いやすい。
もしこれでうまくいくならば、こちらを使う。
そのような制約が無いのが RefCell
。
const でない値への const なポインタみたいなもの。
borrow check を実行時に移動する。なので実行時オーバーヘッドはある。
不変・可変リファレンスカウントがなされ、ルールを破ると実行時に panic する。
スレッドセーフ版。 中身を可変にする効果もついてくる。
どちらもロックによってマルチスレッド環境で一度にアクセスできるスレッドを borrow chcker の行うのと同じルールで実行時に制限できている。
Rc<RefCell>
Arc<Mutex>
Arc<RwLock>
コンパイル時定数ならばかなり気軽に使えるが、 グローバル変数となると当然スレッドセーフの保証などが絡むため、 コンパイラに許してもらうのがややこしくなる。 先に内部可変性の話を読むこと。
お行儀のよいプログラムだと出てこないため、入門書を読んだ直後に困りがち。
使うな。
型は省略できない。 グローバルスコープで宣言可能。 ローカルスコープで宣言することもできる。
単純な定数はだいたいこれで OK。
const LANGUAGE: &str = "Rust";
const THRESHOLD: i32 = 10;
const と同じ文法だが、こちらは mut にすることもできる。 しかしながら普通の書き込み可能グローバル変数はスレッドセーフ性ゼロなので、 unsafe を使わないと普通の型に対してはほとんど役に立たない。
// 注: safe Rust でははっきり言って意味のないコード
static mut THRESHOLD: i32 = 10;
fn main() {
// unsafe で括らないとコンパイルエラーを起こす
THRESHOLD = 20;
}
グローバル変数と書いてしまったが、関数内に書くこともできる。 1つの関数からしかアクセスしないのならばこれで OK。 struct の中や impl の中でも可能らしい。 なるべく可能な限り内側に書こう。
C の static ローカル変数 (静的記憶クラス) に近い。 C がファイル内リンケージのグローバル変数・関数 (C++ 無名 namespace 相当) に 同じキーワード static を使っているのはよくないことだとされている。
pub
のない関数・const/static 変数なぜ static mut が unsafe かというと全てのスレッドの全ての場所から 書き込み可能というのはどう考えても Rust の保証する参照の制限を最初から破っているから。
mut でない static で内部を変更可能にするため Cell を使ってみると、
スレッドセーフでないと怒られる(当たり前)。
スレッドセーフ性は Sync
マーカートレイトで表される。
static C: Cell<u32> = Cell::new(1);
/*
12 | static C: Cell<u32> = Cell::new(1);
| ^^^^^^^^^ `Cell<u32>` cannot be shared between threads safely
|
= help: the trait `Sync` is not implemented for `Cell<u32>`
= note: if you want to do aliasing and mutation between multiple threads, use `std::sync::RwLock` or `std::sync::atomic::AtomicU32` instead
= note: shared static variables must have a type that implements `Sync`
*/
親切にメッセージに出ているが、スレッドセーフな内部可変セル
(Mutex
, RwLock
, atomic など) を immutable static 宣言するのが正解。
static GLOBAL: Mutex<MyData> = Mutex::new(...);
Mutex で包めばスレッドセーフで書き換え可能なグローバル変数を実現できるということで、 直感にも合っている。
const や static は宣言時に初期化する必要があり、関数呼び出しは const fn (コンパイル時に決定できる値、C++ constexpr みたいなもの) でなければならない。
.data
や .rodata
、.bss
に置くために初期値が
コンパイル時に決定できる必要がある。1回だけ値を変更でき、以後変更不能になるセルとして OnceCell
と OnceLock
がある。
OnceLock
は OnceCell
のスレッドセーフ版で、static に使うならスレッドセーフ性が
必要。
変更されない HashMap とか?
以下 OnceLock の公式サンプル
fn computation() -> &'static DeepThought {
// n.b. static items do not call [`Drop`] on program termination, so if
// [`DeepThought`] impls Drop, that will not be used for this instance.
static COMPUTATION: OnceLock<DeepThought> = OnceLock::new();
COMPUTATION.get_or_init(|| DeepThought::new())
}
static 宣言時には OnceLock::new() で空の状態で初期化すればよい。
get_or_init()
はセルが空の場合、引数の関数を呼び出してその返り値でセルを初期化し、
その値を返す。
既に初期化されていた場合、その値を返す。
get_or_init()
には毎回初期化されていなかった時のための関数の指定が必要なので、
static OnceLock
をグローバルスコープに置くのではなく、
サンプルのように関数のローカルスコープに置いて、
get_or_init()
の返り値をグローバル関数として公開するのがよさそう。
OnceLock
はこれをスレッドセーフに行う。
最初の呼び出しだけ重くなるのが嫌なら、プログラムの最初で set().unwrap()
して、
取得時は get().unwrap()
すればいい気がする。
OnceLock
は最初の一回だけ初期化を呼ぶためのもので、読み書き可能グローバル変数は
素直に Mutex
や RwLock
でよい気がする。
関数の返り値を Result にするとき、Err<T>
時の型が合っていないと
? 演算子で楽ができない。
このままだと関数内でいろいろな種類のエラーが返ってくる場合に困る。
そこで、標準ライブラリのエラーは std::error::Error
トレイトを実装しているので
この型でエラーを返すようにする。
The Book でも実は https://doc.rust-jp.rs/book-ja/ch12-03-improving-error-handling-and-modularity.html で導入している。 (Result のエラーハンドリングの章にはない。。)
Rust By Example ではここ。 https://doc.rust-jp.rs/rust-by-example-ja/error/multiple_error_types/boxing_errors.html
オススメ
Result<(), Box<dyn Error + Send + Sync + 'static>>
コンパイル時に型を決定できない方法になるので Box によるヒープポインタ参照を使う。
Send, Sync 制約をつけるとスレッド間でエラーオブジェクトを受け渡せるようになる。 別スレッドで実行した結果を Result として受け取れるようになる。
‘static をつけると is
や downcast_ref
等が使えるようになる。
https://doc.rust-lang.org/stable/std/error/trait.Error.html#method.is
標準ライブラリのみで行うならば前節の通り。
https://qiita.com/legokichi/items/d4819f7d464c0d2ce2b8 スマートなエラー処理に関しては昔からかなり苦労しているらしい…。
anyhow はこの辺りをもっと簡単に書けるようにしてくれるライブラリ。 2019 年頃登場し、2022 年現在デファクトと言える。 特に標準ライブラリのみで頑張る必要がないのであれば、ほぼすべてのプロジェクトの開始時に 依存を張ってよいタイプのライブラリと言えそう。 (個人的にはあまりそういうのは好きではないけど、Rust は基本的なところですら変遷期であり、 しばらく時間が経てば標準入りするんじゃないか?)
https://docs.rs/anyhow/latest/anyhow/
使い方は、とりあえず全部 anyhow::Result<T>
を返せば OK!
これは Result<T, anyhow::Error>
に等しい。
これで std::error::Error
を返せるようになるので、普通のエラーなら何でも
? 演算子で返せるようになる。
(From
trait によって実現されているっぽい。)
std::process::Termination
を実装しているので main から返しても大丈夫。
fn main() -> anyhow::Result<()> {
Ok(())
}
Send + Sync 問題とかも解決しているので async fn から返しても大丈夫。
ダウンキャストの確認や実行も可能 (実行時型情報をどうやって実現してるのか知らんけど)。
context()
を使うと情報を付け加えつつエラーを投げられる。
エラーが起きなかったときにもエラーメッセージが評価されてしまう
(format!()
で文字列を生成する場合など)
問題を回避するには、context_with()
+ ラムダ式のパターンを使う。
こちらだとエラーが起きた場合のみラムダ式が呼ばれてその返り値が使われる。
fn main() -> Result<()> {
...
it.detach().context("Failed to detach the important thing")?;
let content = std::fs::read(path)
.with_context(|| format!("Failed to read instrs from {}", path))?;
...
}
nightly channel を使うか features “backtrace” を指定するとバックトレース機能が 使えるようになる。(そのうち安定化して標準化するかも?)
anyhow::Error
を作りたい場合には anyhow!
マクロが便利。
format!
と同じ用法でエラーを作れる。
マクロであり Debug
Display
を実装している型を渡せば文字列変換して作ってくれるし、
他のエラータイプをそのまま渡すこともできる。
bail!
は return Err(anyhow!(...))
に展開され、より簡単に early return できる。
ensure!
は ensure!(user == 0, "only user 0 is allowed");
のように
if まで省略して early return できる。
anyhow::Error
はエラーチェインに対応しているので、
どのように文字列化するかオプションが多くある。
初めは覚えるのが大変だが一通り見ておくと吉。
"{}"
および to_string()
(Display
) は一番外側のエラーのみを文字列化する。"{:#}"
とすると inner Error も含めて文字列化する。"{:?}"
(Debug
) とすると改行も使いつつ inner Error も含めて詳しく文字列化する。
"{:#?}"
とすると構造体表記になる。通常のハンドル可能なエラーは Result
で返す。
そうでない深刻なエラーは panic()
を呼ぶ。
unwrap()
や assert!()
など、失敗時に panic させる便利関数も多い。
panic は要は C++ 例外で、通常のエラーは C スタイルの整数リターンと早期 return で 十分で、通常のエラーを C++ 例外で返すのは重いという至極真っ当な指摘に基づくと思われる。 panic はスレッドごとに処理される。
何でもかんでもエラーは例外で返そうとする C++ 標準ライブラリと
整数リターンと ? 演算子による eraly return のシンタックスシュガーでよくね?
と主張する Rust、どこで差がついたのか
ちなみに Rust は LLVM の libunwind (元々 C++ 用でもある) を使っているらしい。
panic 関連は std::panic
モジュールにあり、パニックハンドラを設定できたりするが、
有用な用途は少ないかもしれない。
一応 catch もできる。
https://doc.rust-lang.org/std/panic/index.html
組み込みやベアメタル環境では panic 周りに手を入れる必要があるかも。
デフォルトではそのスレッドのみが異常終了するが、大多数のアプリケーションでは プロセスごと強制終了する方が自然ということでオプションが追加された。 デフォルトではないので注意。
unwind する必要が無ければ色々なオーバーヘッドを少なくできる気がするが、 実際のところはよく分からない。 プログラムサイズが小さくなるとの噂はある。
-C panic=unwind
on rustc, panic = 'unwind'
on Cargo.toml
-C panic=abort
on rustc, panic = 'abort'
on Cargo.toml
スレッド間共有データのロック中にそのスレッドが panic した場合、
スタックアンワインドによって drop()
が呼ばれアンロックはされるが、
共有データの不変条件が壊れている可能性がある。
その場合、ロックは poisened 状態としてマークされ、ロックすると失敗する
(Result
で Err
が返る)。
panic=abort
設定の場合は気にする必要がないので unwrap()
してしまってよいだろう。
要はインタフェース。
C++ 以外の言語のインタフェースは dynamic dispatch を指定した Rust の Trait 相当 なので、それ以外の標準的な静的ディスパッチのやり方は C++ template + trait であり、 インタフェースと言われると違和感があるという人もいる。
その通りで、C++ template 黒魔術から危険な成分を除いたものであり、
危険黒魔術を取り扱ったことのない人には馴染みのないものかもしれない。
C++ をやったことのない人が “ジェネリックで受けて静的ディスパッチ”と
言われて理解できるのか???
struct と同じような気持ちで書けば OK。 ただしメンバはフィールドではなく関数を書く。 関数の実装は書かないのでセミコロンで終わらせる。 ただしデフォルト実装を書くこともできる。
pub trait Summary {
fn summarize_author(&self) -> String;
fn summarize(&self) -> String {
format!("(Read more from {}...)", self.summarize_author())
}
}
C++ と同様 テンプレート ジェネリクスで受けるのを推奨。
トレイト境界の記述が長くなっても読みやすい書き方
fn notify<T>(item: &T)
where T: Summary,
{
println!("Breaking news! {}", item.summarize());
}
やや省略した書き方
fn notify<T: Summary>(item: &T) {
println!("Breaking news! {}", item.summarize());
}
最も省略した書き方 (シンタックスシュガー多すぎない?覚えられないんだが)
fn notify(item: &impl Summary) {
println!("Breaking news! {}", item.summarize());
}
引数は &T
型で、ただしここで (where の数学用語としての意) T
は
trait Summary
を実装している、という意味。
1つの型パラメータに複数のトレイト境界を指定したい場合は +
でつなぐ。
Summary
を実装した struct を渡せば T
がその型に推論され、
some_function<ThatType>
がインスタンス化される。
呼び出した型の種類数分の関数が生成されプログラムサイズが増加するが、
コンパイル時に呼び出し関数が決定されるため、
通常の関数呼び出しと実行時コストに差は無い。
こういうことをするから C++ と同じくらいコンパイルが遅い。
基本的には推奨されないが、vtable の関数ポインタによる動的ディスパッチもできる。
C++ の virtual 関数と同様。
関数ポインタ経由の呼び出しになるため実行時オーバーヘッドはある。
self
を引数に取らない関数が NG になったり、
self
の move 渡しが不可能になったりする。
一応、コードサイズが肥大化しないというメリットはある。
元々は &MyTrait
のように書いていたようだが、
型名とトレイト名を混同した書き方はよろしくない
(型は値の分類で、トレイトは型の分類であり、根本的に別物である)
ということと、dynamic dispatch のオーバーヘッドがあるということを明示的に
表記するために文法が変わったようである。
猶予期間を経て現在は dyn が無いとコンパイルエラーになり、dyn をつけろと言われる。
fn notify2(item: &dyn Summary) {
println!("Breaking news! {}", item.summarize());
}
// 古い書き方 (エラーになり dyn をつけろと言われる)
// fn notify2(item: &Summary)
コンパイル時に決まらない型を扱う場合、型のサイズが決定できないので
スタック上に置くことはできない。
Box
を使ってヒープに動的確保し、ポインタで管理する。
色々な異なる型を trait の Vec として管理する場合も同様。
fn create() -> Box<dyn Summary> {
// ...
}
trait (イテレータやクロージャなども) を返す場合、型がコンパイル時に決定できる
(返す可能性のある具象型が1種類) ならば、impl Trait
構文が使える。
この場合 Box
を使わなくて済むし、dynamic dispatch も回避できる。
fn create() -> impl Summary {
// ...
}
妙に分かりづらくてきれそう。
Cargo.lock
を全体で共有できる。cargo new
でできるのは厳密にはこれ。1個のライブラリ、または1個のバイナリという
運用でもいいんじゃないかとも思う。src/lib.rs
があればライブラリクレートのルートとして処理する。
ライブラリクレート名はパッケージ名と同じになる。src/main.rs
があればバイナリクレートのルートとして処理する。
mod
で参照しない限り他のファイルはコンパイルされない。C++ namespace その他色々な言語のモジュールシステムと大体同じ。
もちろん入れ子にもできる。
ただし mod 自体もアクセス指定が可能で、デフォルトでは private なので
pub
をつけないと外からアクセスできない。
まず、クレートルートは src/lib.rs
src/main.rs
(等) である。
ここから辿れるように記述しないと、ファイルを src/
に追加しただけでは
一切コンパイルされない。
mod キーワードで今いる階層にインラインでモジュールを定義できる。 が、ほとんどの場合ファイルを分けるため、ユニットテストの記述以外ではあまり使われない…。 定数定義をまとめる際にはもしかしたら使えるかもしれない。
mod test {
// ...
}
通常はクレート名のみ定義してセミコロンで終わらせる。
するとその名前の *.rs
ファイルを見に行くようになる。
そのファイルにはモジュールの中身
(インラインでの mod { ... }
の中身、...
の部分)
を書く。
インラインの場合よりインデントが一段少なくなる。
mod mymod1;
これを src/lib.rs
に書いた場合、src/mymod1.rs
の中身が mod mymod1
として
コンパイルされることになる。
別ファイルのモジュールの中にさらにモジュールを書いた場合、
// in src/mymod1.rs
mod mysubmod1;
この例では src/mymod1/mysubmod1.rs
を読みに来ることになる。
src/mymod1.rs
にサブモジュール定義一覧が、
src/mymod1/*.rs
にそれぞれのサブモジュールの中身が並ぶことになる。
クレートはコンパイル単位であるので、mod がインライン定義でなくセミコロンで終了した場合、 ファイルの中身をモジュール内に丸ごとコピペ (C/C++ の #include) すると考えてよい。
mod mymod1;
// 上下は同等
mod mymod1 { /* src/mymod1.rs の中身をそのままコピペ */ }
デフォルトで test attribute のついたテストは並列実行される。 ファイルやグローバル変数等のグローバル状態を変更するテストは 並列実行すると失敗する可能性がある。
cargo test
に --test-threads=1
をつけるとシングルスレッド実行になるが、
並列化可能なところまで直列化されてしまう。
mod test
内にグローバル変数として Mutex を用意し直列化したいテストで
ロックを取れば直列化できるが、assert 失敗で panic した場合に
Mutex の PoisonError で他のテストを巻き込んで失敗してしまう。
https://github.com/rust-lang/rust/issues/43155
結論としては serial_test
クレートを使うのが便利。
// これがついたテストは直列化される
#[serial]
// 引数をつけるとその名前のグループ内でのみ排他される
#[serial(group)]
// serial とは排他されるが、parallel 同士は同時に実行可能
#[parallel]
// こちらもグルーピング可能
#[parallel(group)]